日常の節 (1)「月曜日」

春風家の一日は午前４時３０分に始まる。

ジリリリリリリリリリリリリリリキンコンキンコンキンコンキンコンキンコンキンコン・・・・・・・・・・

午前４時３０分に一斉起床するのは、マリアが「電車の運転士になりたい！」と言い出したことから始まる。

電車の運転士になるには、不規則な生活時間の中での自律が必要だが、そっくりそのまま再現するといろいろ問題があるため「家族全員で早寝早起き」で落ち着いた。

本当は４時３０分でも遅いくらいなのだが、夜遅くまで起きている人も多いこのご時世、社会性維持との妥協点が結果としてここになった。

今日の時間割は、現代文、化学、現社、英語、古典、数Ｂ、総合学習ね。

パラパラ・・・

総合学習とは、ふんわりした名前だが、マリアの学校特有の科目のようだ。

SSHという言葉がある。ここで言うSSHは暗号化通信のことではないだろう。

マリアと咲也は復習・予習、恵は朝食の仕込みをしてから内職をしている。健が家にいた場合、同じく４時３０分に起床しそのまま仕事へ向かう。

日常と非日常のメリハリはとてもハッキリしている。・・・長期休暇の宿題が終わらないくらいに。

７時３０分過ぎ、マリアと咲也は登校する。

マリアは京津線上栄町駅に向けて歩き、咲也は自転車で高低差50mの坂道を上る。

びわ湖浜大津で乗り換えた石山坂本線には颯・錦一・弥生が乗っており、島ノ関で陽菜も乗車する。

ここで言う「グルメレース」とは、そのBGMが様々なMADに利用されるタイムアタックゲームではなく、学校至近のギガボリューム食堂で毎日違うメニューを注文する（目標は完全制覇）ことを指す。

だいたいいつも、マリア・颯・陽菜・錦一の４人組である。

食べきれない時に神出鬼没の弥生がタイミングよく救世主のごとく登場することもある。

電車の運転士が40->OFF->30の独特なノッチ操作をすると学校の最寄り駅到着の合図だ。

駅から学校まで、ジョークのネタを考える暇もないほど近い。

学校では８時２５分に予鈴が鳴り、８時３０分になるとホームルームもなく授業に入る。

～一時限目　現国～

～二時限目　化学～

～三時限目　現社～

～四時限目　英語～

学校のおつとめは七時限目まである。無論、ここで言う"おつとめ"は、任侠の世界で使われる言葉ではない。

七時限目が終わると部活動である。

マリア・颯・弥生が生物部に所属しており、錦一と陽菜は帰宅部だ。

２：８の法則を真剣に実践している。マジ話２割雑談８割。

今日は、週末の『Oasis』で見つけた面白い生き物を発表します！

小学生に弄ばれていたマリアちゃんです!!

コンクール前には遅い時間まで論文執筆にかかりっきりのこともあるが、普段は無邪気なじゃれあいが続く。

安全確保につとめており、"じゃれあいキス"事故皆無日数を更新し続けている。

日が暮れる頃に、"なんとなく"部活が終わり、下校する。帰りの電車は朝とは違い３人だ。

びわ湖浜大津で３人はバラバラになる。

弥生はそのまま電車に乗り続け、颯は階段を上り改札へ。

マリアは１番線の△乗車位置に移動。

発車する電車の中から、弥生が毎日違う変なポーズで笑わせてくるのだが、ホームを出たところで電車が交差点信号待ちの一旦停止するので悔しさ倍増である。

おかえり、マリア。

今日はどうだったかしら。

しっかり縄文時代までさかのぼったのね。えらいわ。

手洗いうがいはちゃんとするのよ。

今夜は肉じゃがだから。

春風家は早寝早起きなので午後１０時くらいにはおやすみモードになる。

夕食後は恵の見ている中で１時間だけスマホ文通ができる。文通も、想いを込めるとややこしくなるので、なるべく事務的に進めるよう釘を刺されている。特に夜は感情的になりやすいことを心得ている恵のコントロールだ。

・・・お風呂シーンを期待していた皆さん、ご愁傷さまでした。