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京阪京津線について

京阪京津線の路線識別マーク。平成29年(2017年)6月から使用開始された。(c)京阪電気鉄道

 京阪京津線は太秦天神川駅・京都市役所前駅からびわ湖浜大津駅まで運転される列車の経路路線である。京都市山科区の御陵駅が起点、大津市のびわ湖浜大津駅が終点である。全長7.5km、0キロポストは御陵駅(地下駅)にあるが、地下トンネル出口付近を境にキロ程が旧線三条駅基準に切り替わる(約3.7km加算される)。終点のびわ湖浜大津駅は11.1km地点付近である。御陵駅からびわ湖浜大津への方向が上り、逆が下りである(東京に向かう方向が上りとなる原則)。列車運行区間のうち、太秦天神川駅から御陵駅まではもう一つの経路路線である京都市営地下鉄東西線に属する。京津線に関する記述は基本的に御陵駅からびわ湖浜大津駅についてのものである。
 開業は1912年8月15日。京津線は途中幾度もあった困難を乗り越えて100年以上走り続けている。
 軌間は1435mm。全線複線で、直流1500V電化されており、途中に優等列車待避可能駅は存在しない。四宮駅に車庫と折り返し設備を備えている。
 途中駅は、京阪山科駅、四宮駅、追分駅、大谷駅、上栄町駅がある。2015年より駅ナンバリングが実施されており、御陵駅はT08(ティーゼロエイトと読まれる)、京阪山科駅はOT31、四宮駅はOT32、追分駅はOT33、大谷駅はOT34、上栄町駅はOT35、びわ湖浜大津駅はOT12である(御陵駅は地下鉄東西線ナンバリング、びわ湖浜大津駅は石山坂本線ナンバリングに含まれる)。

 

 最高速度は75km/h、保安装置は京阪式ATSである。全線で終日ワンマン運転を行っているが、毎年8月のびわ湖大花火大会では1年を通して最も多客となるためツーマン運転を行っており、それ以外の日でも稀にツーマン運転が見られる。
 最小曲線はR=40m、最急勾配は61‰であり、地形の関係上全体を通して線形は極めて厳しい。
 御陵駅から京阪山科駅まで、地下鉄線から近郊路線への切り替わりと民家の間を縫う急曲線が連続する。民家の間を縫う急曲線では列車通過時に散水し車輪きしり音を抑制して付近の居住環境に配慮している。
 京阪山科駅から四宮駅までも民家の間を縫うように走るが、ほぼ直線で疾走する。
 四宮駅を出ると車庫との接続線と合流した直後、引き上げ線をよけるようにS字に曲がる(阪急神戸線の西宮北口駅から神戸三宮方面に出発する経路に似ている)。京都府と滋賀県の境界付近にある急曲線を通過すると最大40‰の勾配を高速で駆け上がる。ロングレール区間が続いており疾走感がある箇所である。名神高速道路京都東インターのランプから接続している西大津バイパスをくぐった直後に追分駅に到着する。
 追分駅を出発し名神高速道路をくぐると、急曲線の後に、名神高速道路と国道1号に挟まれて走る。そのまま峠まで上ると大谷駅に到着する。大谷駅では40‰の勾配上で停車し、足の長さが左右で違うベンチが見られる。
 大谷駅を発車した直後、上り40‰から下り40‰に勾配が急変し、唯一のトンネル(逢坂山隧道)に入る。トンネルは全長250mにもかかわらず両端の高低差が10mある。トンネル出口でR=45mの急曲線で直角に曲がり、谷あいを国道1号線と民家に挟まれながら下る。国道1号線をくぐる直前に最急勾配の下り61‰とR=80mの急曲線が連続し、直後に国道161号線と平面交差する大きな踏切(上関寺国道踏切)を通過する。民家の間を縫いながら急曲線・急勾配をゆっくり下り、途中で東海道本線をまたいで上栄町駅に着く。上栄町駅はホーム配置が千鳥式になっていて、上下ホームで急カーブをはさんでいるため片方のホームからもう片方のホームが見通せない。上栄町駅の上りホームは下り40‰勾配の途中にあり、大谷駅と同様に停車が難しい。
 上栄町駅を出ると、R=40mの最小曲線で併用軌道に入る。全長66m4両編成の電車が併用軌道を走行するのは日本中探してもここだけである。100年以上前の開業当初、京津線は京町一丁目交差点付近の札ノ辻駅(廃駅)止まりであった。札ノ辻は旧東海道の大津宿から京・三条大橋へ向かう出口付近であり北国街道との分岐点でもありかつては交通の要衝であった(詳しい方なら札ノ辻という地名だけでいろいろ分かるはず)。併用軌道はびわ湖浜大津駅に向かって下り坂になっており、ところどころで勾配が変化する。併用軌道では大津祭の曳山と並ぶシーンが毎年10月に見られる。併用軌道途中でアーケード街を通過し、勾配を下りきると大きな道路交差点があり、直角に曲がりびわ湖浜大津駅に到着する。以上のように、ざっと見ても地下鉄・都市内鉄道・登山鉄道・路面電車の性格を持ち変化が豊富な路線であることが京津線の特徴の一つとして挙げられる。びわ湖浜大津駅がかつてスイッチバック駅構造であったことや、JR東海道本線と大津駅至近に立体交差があるのになぜ連絡駅が設置されていないのかとか、京津間途中で線路切り替えのあった場所が複数箇所ある、などまだまだ話題に尽きないが、書ききれないため次の話に移る。

 列車は、4両編成の800系電車により全便運行されている。昼間は20分間隔に乗車チャンスがあり、早朝除く終日ほぼ全ての列車が太秦天神川-びわ湖浜大津間運転列車である。びわ湖浜大津から三条京阪(京阪本線との乗換駅)までは約23分である。時代を経るごとに高速化し所要時間が短縮している。100年以上前の開業当初は所要時間30分であった。かつては京阪線から通しで乗車券を購入できたが、現在では分断され、びわ湖浜大津駅から三条駅までの乗車券(乗り入れ先である地下鉄線の運賃が加算される)と三条駅からの乗車券を別々に購入する必要がある。なお、開業当初の京津線は国鉄(当時)と比較して京都・大津間を短い所要時間で結び、運転頻度も圧倒的に多く、運賃も安く、都心同士を結んでおり圧倒的に利便性に優っていたが、後にトンネルでの短絡により国鉄が速度面で優位に立ち、現在では国鉄から継承したJRが優位に立っている。今では京津線の役割は都市間主力路線から観光路線および滋賀県の孤立を水際で防ぐバックアップ路線へとシフトしている。かつては大阪天満橋駅から京都三条駅を経由し浜大津駅(現在のびわ湖浜大津駅)に直通する特急が運転されていたほど都市間の大動脈に組み込まれていた状態であったが、次第に途中駅で均等な利便性を確保するダイヤへと変化していく。1997年の準急廃止以降は普通列車のみ運転されている。
 2015年現在の運賃は、びわ湖浜大津~三条京阪が430円、びわ湖浜大津~御陵が240円。全駅でPiTaPa・ICOCAが利用可能である。定期券は通学用の割引率がかなり優遇されている(通勤用の3分の1の値段。小学生から大学生まで同一。参考までに、びわ湖浜大津駅から京阪山科駅までの通学1ヶ月定期は2015年現在2,480円)。一日乗車券も発売されており、片道移動にとどまらず回遊する場合は一日乗車券の方が断然格安となる。

 

京阪京津線配線図

太い箇所が運転シミュレータ再現区間となります。

 

京阪800系 車両紹介

 京阪800系電車は京津線京津三条-御陵間を京都市営地下鉄東西線に乗り入れることで路線を置き換えるに際し、地下鉄乗り入れが可能な京津線用車両として1997年に4両編成8本計32両が建造された。

 

外観

 外観は同年に製造された本線用通勤特急車9000系に準じたデザインとなっている。カラーリングは登場時では京阪線の特急車とも通勤車とも異なる京津線独特の配色が採用されたが、2017年からブランドイメージ統一のため変更が進められている(2018年4月時点で815、811編成)。乗降口は片側3扉両開きとなっている。ドアとドアの間には大きな窓が配置されており、良好な展望が実現されている。パンタグラフも京阪初となるシングルアームパンタグラフを搭載し幅広い架線高さに対応。行先表示装置も京阪初となるLEDによる表示方式が採用され、2018年には811編成で視認性向上のためフォント変更が試行されている。

 

車内

 内装は本線用9000系に準じており、壁紙が9000系と同一、座席は先頭車が離反型固定セミクロスシート、中間車がロングシート、シートモケットは9000系と同一である。なおシートモケットは後年(2006年頃)青色のものに更新された。9000系とは異なり補助椅子は設置されず、パワーウィンドウも設置されていない。各車両車いすスペースが配置されており、非常時に備えて乗務員との通話装置が設置されている。ドア上に水色蛍光表示管による案内装置が設置されているが、本線9000系とは異なり停車駅案内ランプは付いていない。後に、車内案内装置は3色LED方式に更新された(2013年頃)。つり革はドア部分で京阪伝統の はね上がるつり革が採用されており、案内装置の視認性確保のためたたむ向きが工夫されている。 注:本線9000系も現在では各所更新されている。

装備

 地下鉄線・登山路線・路面電車の3役をこなすため、全車電動車であり高性能な電動機を搭載し、ブレーキシューは天候変化に強く低速域で高い制動力を得られる鋳鉄製を採用。保安装置は京阪ATSと地下鉄ATCを搭載し、地下鉄線内でのATOを用いた自動運転・TASCによる自動停車に対応している。電動機制御装置は京阪初のIGBT素子VVVF制御が採用された。動力装置は京阪車でシェア独占している東洋電機製。運転台は京都市営地下鉄50系と同型のものが採用されているが、京阪全車に装備されているデッドマン装置(運転中にマスコンハンドルから手を放すと非常ブレーキが作動する安全装置)は他の系列と同様、装備されている。ただしハンドル形状が異なる。運転台には保安装置状態ランプ・(ホームドアに対応した)扉状態ランプ・計器・モニタ2個・ドア開注意ランプが配置されている。ハンドル脇には地下鉄線内用のドア開閉ボタンおよびATO発車ボタンも配置されている。運転台に設置されている計器は速度計と圧力計のみたが、右側のモニタにより車両の諸状態を確認できる。速度計のレンジはこれまでの大津線用車両よりも高速域に対応して0?120km/hである。モニタのうち左側に配置されている方には、ホーム監視カメラからの映像が転送される。当初は連結両数ステッカーは貼られていなかったが、2013年に貼られている。ドア開注意ランプ(ドアが開いている間点滅し続ける)も追加装備である。ドア開閉装置は乗務員扉横の引張式と運転台上の押しボタン式が装備されており、京津線内と地下鉄線内とで使い分ける。ドアエンジンは静音タイプだが、本線9000系よりも静音のものを装備している(本線10000系に採用されているものに近い音)。開閉時にはブザーも鳴るが、ブザーの音でドアエンジンの音はほとんど聞こえなくなる。ホーム検知装置を装備しており誤操作の防止により保安度向上に貢献している。

 2000年よりワンマン運転を行っているが、ワンマン運転である掲示装置はない。京阪の通勤車として初めて自動放送装置が搭載された。自動放送音声は2009年の太秦天神川乗り入れ・2018年の大津線駅名変更に際し更新されている。多彩な性格を持つ路線を走行できる性能を確保しつつ上質な接客設備を備えた結果、車両製造費は国内トップクラスの高価(新幹線レベル!)となっており、最高級通勤車として名高い。

 

編成表

←びわ湖浜大津

 

 

太秦天神川→

802 852 851 801
804 854 853 803
806 856 855 805
808 858 857 807
810 860 859 809
812 862 861 811
814 864 863 813
816 866 865 815